本記事は2026年6月時点の一般的な情報の整理です。税制は毎年見直され、金額や期間も変わります。実行前には必ず国税庁の最新情報を確認し、税理士など専門家にご相談ください。
まず何をすべきか(結論)
- 目的を決める:相続税対策なのか、子・孫の生活支援なのかを明確にします。目的で最適な制度が変わります。
- 使える制度を選ぶ:暦年課税(年110万円)か、相続時精算課税(年110万円+特別控除2500万円)かを比較します。
- 贈与契約書を作る:贈与のたびに日付・金額・当事者を明記して署名します。
- 銀行振込で実行する:現金手渡しは避け、通帳に履歴を残します。受け取る側が普段使う口座に入れるのが基本です。
- 必要なら申告する:年110万円(暦年)を超えたら、翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告をします。
生前贈与で失敗する主な原因を深掘り

- 原因1:名義預金になっている。親が子・孫の名義で口座を作り、通帳と印鑑を親が管理しているケースです。実際にお金を自由に使えるのは親なので、税務上は「親の財産」とみなされ、相続税の対象に戻されることがあります。
- 原因2:定期贈与とみなされる。「毎年100万円を10年間あげる」と最初に約束していると、初年度に1,000万円をまとめて贈与する約束があったとされ、課税される可能性があります。
- 原因3:7年加算ルールの見落とし。相続開始前7年以内(改正前は3年)の暦年贈与は、相続財産に加算されます。直前の贈与は節税効果が薄れます。
- 原因4:契約書・振込記録がない。手渡しや口約束は、いざというとき「贈与の事実」を証明できません。
- 原因5:不動産を安易に贈与。不動産は贈与だと税負担が重くなりやすく、後述のとおり相続より不利になる場合があります。
「生前贈与加算」とは、相続税逃れの駆け込み贈与を防ぐ仕組みです。2024年以降の贈与から段階的に7年へ延長され、延長された4年分(3年超〜7年以内)については合計100万円まで加算対象外とされています。
原因別の見分け方(自分はどれに当てはまる?)
| チェック項目 | 安全な状態 | 危険な状態(否認リスク) |
|---|---|---|
| 口座の管理者 | もらった本人が通帳・印鑑・暗証番号を管理 | あげた親が管理している |
| 贈与の証拠 | 毎回、贈与契約書あり | 口約束のみ・書面なし |
| お金の動き | 銀行振込で履歴あり | 現金手渡しで記録なし |
| 贈与の約束 | 毎年その都度判断 | 「毎年◯円を◯年」と最初に約束 |
| 受贈者の認識 | 本人がもらった自覚あり | 本人が口座の存在を知らない |
「子ども名義で毎月コツコツ積み立ててきた」という善意の貯金ほど、名義預金として相続財産に戻されやすい傾向があります。良かれと思った行為が裏目に出ないよう、管理権を本人に移すことが大切です。
具体的な解決方法(失敗しない実践手順)
暦年課税を安全に使う手順
- 贈与のたびに契約書を作成:年ごとに日付・金額・贈与者・受贈者を明記し、双方が署名・押印します。
- 金額や時期に変化をつける:毎年同額・同時期を機械的に繰り返すと定期贈与を疑われやすいため、状況に応じて調整します。
- 銀行振込で実行:受贈者が日常使う口座へ振り込み、履歴を残します。
- 通帳・印鑑は受贈者が管理:管理権を本人に渡すことが「本当の贈与」の証拠になります。
- 110万円超なら申告:超えた年は翌年3月15日までに贈与税申告を行います。
相続時精算課税という選択肢
| 比較項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 非課税の基本枠 | 年110万円 | 年110万円+特別控除2,500万円 |
| 相続時の加算 | 死亡前7年以内分を加算 | 年110万円超の贈与分を加算 |
| 制度の変更 | いつでも利用可 | 一度選ぶと暦年に戻せない |
| 向いている人 | 毎年コツコツ渡したい | まとまった額を早く渡したい |
相続時精算課税は一度選ぶと同じ贈与者からは暦年課税に戻せません。選択は慎重に行い、必ず事前に税理士へ相談することが推奨されています。
ケース別の対処法
- ケース1:孫へ教育資金を渡したい。都度の学費・生活費の援助は、扶養義務の範囲なら原則非課税とされています。一括で渡す場合は「教育資金の一括贈与の特例」が使えることがありますが、適用期限や使途制限があるため、最新の取り扱いを国税庁で確認してください。
- ケース2:配偶者へ自宅を渡したい。婚姻期間20年以上の夫婦なら、居住用不動産またはその取得資金について最大2,000万円まで控除できる「贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)」が利用できる場合があります。基礎控除と合わせ最大2,110万円まで非課税にできるとされています。
- ケース3:子へ住宅資金を援助したい。「住宅取得等資金の非課税の特例」が使える場合があります。省エネ住宅かどうかで非課税枠が変わり、年度ごとに条件が見直されるため事前確認が必須です。
- ケース4:不動産そのものを贈与したい。後述のとおり税負担が重くなりやすいため、相続で渡す選択肢と必ず比較しましょう。
生活費や教育費を「必要な都度」「必要な額だけ」渡す分は、もともと贈与税の対象外とされています。あえて特例を使わなくても援助できる場面は意外と多いです。
予防・再発防止のコツ
- 贈与のたびに契約書:毎年1枚ずつ作り、ファイルで保管します。
- 必ず銀行振込:現金手渡しはやめ、お金の流れを通帳に残します。
- 通帳・印鑑は受贈者管理:名義預金化を防ぐ最重要ポイントです。
- 記録を一カ所に集約:契約書・振込控え・申告書をまとめて保管します。
- 早めにスタート:7年加算を考えると、贈与はできるだけ早く・長く続けるほど有利になりやすいです。
- 年に一度見直す:税制改正や家族構成の変化を毎年点検します。
専門家・公的情報の見解
その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に対して贈与税がかかります。(国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」より要約)
相続や遺贈などにより財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前一定期間内に暦年課税に係る贈与によって財産を取得したことがある場合には、その贈与財産の価額を相続財産の価額に加算します。(国税庁「相続財産に加算される贈与財産」より要約)
税制は毎年改正されます。本記事の数値や期間も将来変わる可能性があります。実行前には国税庁ホームページで最新情報を確認し、税理士・司法書士など専門家にご相談ください。
やってはいけないNG対応
- NG1:現金手渡しで記録を残さない。証拠がないと贈与と認められず、相続財産に戻される恐れがあります。必ず振込にしましょう。
- NG2:子・孫名義の口座を自分で管理し続ける。名義預金とされ、節税効果が消える典型例です。
- NG3:亡くなる直前の駆け込み贈与。7年以内の暦年贈与は加算対象です。直前ほど効果が薄れます。
- NG4:「毎年◯円を◯年」と最初に約束する。定期贈与とみなされ、一括課税のリスクがあります。
- NG5:深く考えずに不動産を贈与する。下表のとおり、相続より税負担が重くなる場合があります。
| 比較項目 | 生前贈与で渡す | 相続で渡す |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の2.0% | 0.4% |
| 不動産取得税 | かかる | かからない(原則) |
| 小規模宅地等の特例 | 使えない | 要件を満たせば使える |
不動産の生前贈与は、登録免許税・不動産取得税の負担に加え、相続なら使えた小規模宅地等の特例(最大8割評価減)が使えなくなることがあります。自宅などは安易に贈与せず、必ず相続との比較を行ってください。




