この分野には業規制がありません
国土交通省「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」(令和6年6月)は、空き家管理サービスについて「様々な主体が空き家管理に関するサービスを提供していますが、業務の適正化を図る制度が存在しないのが現状です」と明記しています。賃貸住宅管理業法のような登録制度がないため、「実績を確認する」といった一般論ではなく、契約書の記載事項で自己防衛する必要があります。本記事後半に国のガイドライン準拠のチェックリスト15項目を用意しました。
空き家管理サービスのおすすめは?|結論と主要5サービスの位置づけ
| サービス | 月額(税込) | 訪問頻度 | 特徴 | 対応エリア |
|---|---|---|---|---|
| 郵便局の空き家みまもり | 4,280円 | 月1回 | 7項目点検・写真最大5枚のメール報告。2025年1月提供開始 | 全国 |
| NPO法人空家・空地管理センター 空き家あんしん管理 | 2,750円 | 月1回 | 最安水準。外観中心 | 全国(提携含む) |
| 同 空き家あんしん管理プラス | 6,600円 | 月1回 | 室内対応を含む上位プラン | 全国(提携含む) |
| HOME ALSOK るすたくサービス(基本) | 7,700円 | 契約による | 初期費用0円。駆けつけ出動3,300円/回 | 全国 |
| 同 セキュリティパック+換気 | 18,700円 | 契約による | 防犯機器+換気まで最も手厚い | 全国 |
| 東京ガス 実家のお守り | 3メニュー制(要確認) | メニューによる | オプションが明朗。郵便物転送770円など | 東京23区・神奈川・千葉・埼玉の指定地域 |
「100円管理」をどう見るか
月100円台をうたうサービスも存在しますが、内容はポスト確認や外観目視の写真送付に限られることが一般的です。後述する「資産価値保全コア3項目」を満たさないため、解体予定の物件など目的が限定される場合の選択肢と考えてください。
空き家管理を委託すべきか|片道所要時間で決まる判定チャート

判定チャート:委託の要否とプラングレード
| 回答 | 月1回以上の管理達成率(国交省実測) | 判定 |
|---|---|---|
| 徒歩圏内 | 81.4% | 自主管理で回りやすい。除草など重作業のみスポット依頼 |
| 車・電車で1時間以内 | 73.2% | 自主管理可。繁忙期や冬季だけ併用も可 |
| 1〜3時間 | 54.2% | 委託を推奨(半数近くが月1回を維持できていない) |
| 3時間超 | 42.6% | 委託をほぼ必須と考える(6割近くが維持できていない) |
| 想定する出口 | 必要な管理内容 | 推奨プランと月額レンジ |
|---|---|---|
| 3年以内に売却 | 通風換気・通水・雨漏りチェックが必須(内装劣化が査定に直結) | 郵便局+通風通水オプション(4,280円+5,000円)/NPOあんしん管理プラス(6,600円)/ALSOK換気付き(18,700円)=約6,600〜18,700円 |
| 5年以上保有・将来活用 | 上記に加え、台風・地震後の見回りと修繕提案 | 郵便局(オプション併用)/ALSOK基本(7,700円)+臨時見回り=約7,700〜18,700円 |
| 解体予定(1〜2年内) | 外観目視・草木の管理・近隣クレーム防止で足りる | NPOあんしん管理(2,750円)など低額プラン=約2,750〜4,280円 |
| 状況 | 次のアクション |
|---|---|
| 住宅物件のまま | 居住実態がなくなると一般物件扱いへの変更を求められる場合があります。管理委託の見積もりと同時に保険会社へ確認を |
| 一般物件に切替済 | 保険料が上がっているはずです。地震保険の付帯可否も含め補償内容を再確認 |
| 未確認 | まず保険会社へ連絡を。 未申告のまま罹災すると支払いで争いになる可能性があります |
空き家管理代行の比較は「点検項目カバー率」で|月額だけでは判断できない
| 管理内容(国交省調査項目/実施率) | 郵便局 空き家みまもり 4,280円 | NPO あんしん管理 2,750円 | NPO あんしん管理プラス 6,600円 | ALSOK るすたく基本 7,700円 | ALSOK +換気 18,700円 | 東京ガス 実家のお守り |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 外回りの清掃・草取り・剪定(79.5%) | △ 都度見積 | × | △ | × | × | △ 草むしり延長9,900円/60分 |
| 戸締まりの確認(74.9%) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 住宅の通風・換気(66.9%) | △ 通風通水+5,000円 | × | ○ | × | ○ | メニューによる |
| 郵便物等の整理(57.0%) | △ 投函物送付+800円 | ○ | ○ | × | × | △ 転送770円(国内) |
| 住宅内の清掃(55.4%) | × | × | △ | × | × | △ |
| 台風・地震後の見回り(49.3%) | △ 臨時見回り3,000円/回 | × | △ | △ 出動3,300円/回 | △ 出動3,300円/回 | △ |
| 傷み・雨漏りのチェック(48.3%) | ○ | × | ○ | × | × | メニューによる |
| 水回りの点検・通水(43.3%) | △ 通風通水+5,000円 | × | ○ | × | ○ | メニューによる |
| 除排雪(16.6%) | × | × | × | × | × | × |
| (a) 基本料に含む○の数 | 2 | 2 | 5 | 1 | 3 | 要見積 |
| (b) 1項目あたり単価(月額÷○の数) | 2,140円 | 1,375円 | 1,320円 | 7,700円 | 6,233円 | 要見積 |
| (c) 資産価値保全コア3項目(通風換気・通水・雨漏り)を基本料で満たすか | ×(+5,000円で○) | × | ○ | × | ×(雨漏り点検が別) | 要確認 |
※ALSOKるすたくは防犯機器による常時監視と駆けつけが主眼のサービスで、巡回型の点検項目数では評価しきれません。(b)の単価は「点検項目あたりのコスト」を示すもので、防犯価値は反映していない点にご注意ください。
- 最安の2,750円プランはコア3項目をひとつも満たさない。 外観と戸締まりの確認が中心で、室内の劣化は把握できません。売却予定の物件では査定に響く恐れがあります
- 1項目あたり単価では6,600円のプラスプランが最も安い(1,320円)。 月額は2.4倍ですが、カバーする範囲を考えると割高ではありません
- 郵便局4,280円は通風通水オプション(+5,000円)を足すと9,280円となり、NPOのプラス(6,600円)を上回ります。全国対応と郵便局という安心感に月2,680円を払う価値があるか、という比較になります
「コア3項目」を重視する理由
通風・換気は木材の腐食とカビ、通水は排水トラップの封水切れによる臭気と害虫、雨漏りチェックは構造材の劣化に、それぞれ直結します。いずれも発見が遅れるほど修繕費が膨らむ性質のもので、外観目視では気づけません。だからこそ、実施率が5割を切っているという国交省のデータが問題になります。
郵便局の空き家みまもりの料金内訳
| 項目 | 料金(税込) |
|---|---|
| 基本料金 | 4,280円/月(月1回訪問・7項目点検・写真最大5枚のメール報告) |
| 通風・通水サービス | 5,000円/月 |
| 郵便受箱投函物送付 | 800円/月 |
| 巡回看板設置 | 1,680円/個 |
| 臨時見回り | 3,000円/回 |
| 草刈・不用品整理 | 都度見積 |
自治体の「空家等管理活用支援法人」という選択肢
空き家管理の費用相場|年間費用と自主管理コストの分岐点
| 片道所要時間 | 往復交通費の目安 | 年間の交通費 | 年間の拘束時間 | 月1回以上を実際に維持できている割合 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| 徒歩圏内 | ほぼ0円 | ほぼ0円 | 約12〜24時間 | 81.4% | 自主管理が合理的 |
| 車・電車で1時間以内 | 約2,000円 | 約2.4万円 | 約36時間 | 73.2% | 自主管理可。重作業のみ外注 |
| 1〜3時間 | 約8,000円 | 約9.6万円 | 約72時間 | 54.2% | 巡回型(年3.3〜7.9万円)が同等以下 |
| 3時間超 | 約20,000円〜 | 約24万円〜 | 約100時間以上 | 42.6% | 委託が明確に有利 |
※交通費は移動手段や地域で大きく変わるため、ご自身の実費に置き換えてください。
管理を怠ると税負担が増える可能性
空き家をめぐる全体状況
総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査(速報集計)によると、空き家の総数は900万戸(平成30年849万戸)、空き家率13.8%で過去最高。うち「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万戸(同349万戸)です。自治体が空き家対策を強める背景には、この増加傾向があります。
空き家管理の頻度は月1回で足りるか|実態と判断基準
- 台風・豪雨・地震の後:定期巡回とは別に臨時見回りを(郵便局なら3,000円/回、ALSOKなら出動3,300円/回)
- 積雪地域の冬季:除排雪の実施率は16.6%と低く、多くのサービスで対象外。冬季の水道閉栓・水抜きの取り決めとあわせて事前に確認を
- 庭木が茂る物件の初夏〜秋:草木の成長期は月1回の除草では追いつかないことがあります
- 近隣から苦情が出たことがある物件:頻度より「連絡がすぐ届く体制」を優先
契約前チェックリスト15項目|国交省ガイドライン準拠
国交省ガイドラインが示す契約書の記載事項(①〜⑩)
- [ ] ① 業者の商号が契約書に明記されているか
- [ ] ② 対象物件の所在地・構造・付属施設の範囲(庭・物置・駐車場を含むか)が特定されているか
- [ ] ③ 作業の内容及び頻度が具体的に書かれているか(「巡回」だけでなく点検項目まで)
- [ ] ④ 報酬と支払時期・方法が明記されているか
- [ ] ⑤ 再委託の可否と、再委託先の責任範囲が定められているか
- [ ] ⑥ 責任及び免責の範囲が明記されているか
- [ ] ⑦ 作業完了報告の方法(写真の有無・枚数・送付手段・期限)が定められているか
- [ ] ⑧ 契約期間・更新・解除の条件が明記されているか
- [ ] ⑨ 個人情報の取扱いが定められているか
- [ ] ⑩ 移動困難な家財等の取扱い(仏壇・大型家具など)が取り決められているか
本記事独自の追加確認項目(⑪〜⑮)
- [ ] ⑪ 賠償責任保険の加入証明を提出してもらえるか
- NG回答例:「加入しています」と口頭のみで証券を見せない
- 国交省ガイドラインも「受託者が賠償責任保険等へ加入することが望ましい」としています
- [ ] ⑫ 免責条項が「一切の責任を負わない」型になっていないか
- NG回答例:「当社は本作業に関し一切の責任を負いません」
- 委託者が消費者に該当する場合、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項等は消費者契約法第8条により無効です。国交省ガイドラインも、受託者側の故意・過失がある場合にのみ責任を負う旨を契約に明記するよう示しています
- [ ] ⑬ 電気・水道の通電通水の可否と料金負担者、寒冷地は冬季閉栓・水抜きの取り決めがあるか
- NG回答例:「通水はサービスに含みますが、水道は開けておいてください」(費用負担と凍結時の責任が不明確)
- [ ] ⑭ 鍵の保管方法と持出記録が定められているか
- NG回答例:「事務所で預かります」のみで、保管場所・持出記録・紛失時の対応が不明
- [ ] ⑮ 災害後対応が基本料内かオプションか、料金と対応可能日数が明示されているか
- NG回答例:「台風の後は状況を見て対応します」(料金も期限も未確定)
最大の危険信号
「契約書はなく申込書のみ」「重要事項は口頭で説明」 という業者は避けてください。国が業規制の不在を認めている分野では、書面の有無がそのまま自己防衛力の差になります。上の15項目のうち①〜⑩は国が示した内容ですから、これに答えられない業者は国の指針を把握していないと判断できます。
空き家を放置するリスクと管理の基本
- 換気されず湿気がこもり、カビや木材の腐食が進む
- 通水されず排水トラップの水が蒸発し、下水の臭気や害虫が侵入する
- 雑草や庭木が伸び放題になり、近隣への越境や景観悪化を招く
- 郵便物の滞留や雨戸の閉鎖が「留守」のサインとなり、不法侵入・放火のリスクが高まる
- 管理不全空家・特定空家に指定され勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れる可能性がある
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