エンディングノートの書き方で迷ったら、まずは「書ける項目から、思いついた順に箇条書きで埋める」ことから始めましょう。最初のページから完璧に順番どおり書こうとすると、ほとんどの方が途中で手が止まってしまうとされています。
エンディングノートとは、自分にもしものことがあったとき、残された家族が困らないように「資産・医療や介護の希望・葬儀の希望・連絡先」などを書き残しておくノートです。遺言書と違って法的な効力はありませんが、家族への実務的な「引き継ぎ書」として、終活の第一歩に選ぶ方が急増しています。
この記事では、「何から書けばいいか分からない」「買ったまま白紙で止まっている」という方に向けて、書く順番・項目・つまずきの乗り越え方・NG例までを、具体例とともにわかりやすく解説します。読み終えるころには、今日からあなたが最初の1ページを書き出せる状態になっているはずです。
エンディングノートは「一気に完成させるもの」ではなく「少しずつ更新し続けるもの」です。完成度は8割で十分。空欄があっても、書いた分だけ家族は確実に助かります。
まず何をすべきか|書きやすい項目から埋めるのが正解
エンディングノートの書き方の結論は、「ノートを1冊用意し、書ける項目から箇条書きで埋める」ことです。順番どおりに書く必要はなく、書きやすいところから着手するのが挫折しないコツとされています。
最初にやることは、次の3ステップです。難しく考えず、まずは30分だけ机に向かってみましょう。
- ノートを1冊用意する … 市販品(書店・100円ショップ・通販で数百〜1,500円程度)か、お住まいの自治体が無料配布しているものを選びます。パソコンが得意な方は、テンプレートをダウンロードして印刷してもかまいません。
- 全体をざっと眺める … 最初から書かず、まず全ページをめくって「どんな項目があるか」を把握します。これだけで心理的なハードルが下がります。
- 今すぐ書ける項目から埋める … 氏名・生年月日・血液型・緊急連絡先など、迷わず書けるところから手をつけます。
どうしても優先順位に迷う場合は、家族が「すぐ困ること」から書くのがおすすめです。具体的には ①資産の一覧 ②家族・親族の連絡先 ③医療や延命治療の希望 の3つです。これらは、もしものとき家族が真っ先に必要になる情報だからです。
鉛筆やフリクションペン(消えるボールペン)で下書きすると、心理的に書き始めやすくなります。内容が固まったら油性ボールペンで清書すると安心です。
まずは「完璧な1冊」を目指すより、「今日、1項目埋める」ことを目標にしてください。書き始めさえすれば、続きは自然と進んでいきます。
なぜ書けない・続かないのか|主な原因を深掘り

エンディングノートが書けない主な原因は、「完璧主義」「項目の多さ」「死を意識する心理的ハードル」の3つに集約されるとされています。原因が分かれば、対策も立てやすくなります。
原因1:完璧主義で「ちゃんと書かなきゃ」と構えてしまう
最も多いのが、「どうせ書くなら全部きちんと埋めたい」と気負いすぎるケースです。資産の正確な金額や、葬儀の細かい希望まで一度に決めようとすると、考えがまとまらず手が止まります。エンディングノートは何度でも書き直せるものなので、「とりあえずの下書き」で十分という意識が大切です。
原因2:項目が多すぎて、どこから書くか分からない
市販のノートは50〜100項目に及ぶこともあり、最初のページを開いた瞬間に圧倒されてしまいます。これは「全項目を順番に埋めなければ」という思い込みが原因です。実際には、空欄があっても問題ありません。
原因3:死を連想して気が重くなる
「縁起でもない」「まだ早い」という心理的な抵抗も、よくある原因です。特に体調の良い時期は、自分ごととして捉えにくいものです。しかし、判断力や体力があるうちに書いておくほうが、内容も充実し、家族の負担も減るとされています。
「いつか元気なうちに」と先延ばしにした結果、認知機能の低下や急な入院で書けなくなるケースは少なくありません。エンディングノートは“元気な今”がいちばん書きやすいタイミングです。
つまり、書けない原因の多くは「能力」ではなく「構え方」にあります。ハードルを下げる工夫さえすれば、誰でも書き進められます。
あなたのつまずきタイプ別の見分け方
つまずきの原因は人によって違うため、自分のタイプを知ってから対策を選ぶのが近道です。下の表で、自分に近いタイプと処方箋を確認しましょう。
| つまずきタイプ | 口ぐせ・特徴 | 効く対策 |
|---|---|---|
| 完璧主義型 | 「ちゃんと全部書きたい」 | 鉛筆で下書き・空欄OKと割り切る |
| 多忙・後回し型 | 「時間ができたら」 | 1日1項目・タイマー15分だけ |
| 不安型 | 「何を書けば正解?」 | 最優先3項目(資産・連絡先・医療)だけ先に |
| おひとりさま型 | 「家族がいないから不要」 | 死後事務・連絡先・デジタル情報を重点的に |
完璧主義型の方は、「清書版」と「下書き版」を分けて考えると進みます。まず鉛筆で雑に埋め、後から整えるイメージです。
多忙・後回し型の方は、書く時間をあらかじめ決めてしまうのが有効です。「日曜の夜に15分だけ」とルール化すると、習慣になりやすくなります。
不安型の方は、本記事の「具体的な書き方」で挙げる項目のうち、まず3つだけに絞ってください。完成度より「家族が困らない情報があるか」を基準にすると迷いません。
おひとりさま型の方こそ、実はエンディングノートが必要です。身近に状況を把握している人がいない分、連絡先・契約情報・死後の手続きを書き残す意味が大きいとされています。
どのタイプでも共通する突破口は「最初の1項目を今日書く」こと。氏名と緊急連絡先だけでも、書き始めた瞬間に心理的なハードルは大きく下がります。
エンディングノートの具体的な書き方|項目別ガイド
エンディングノートに書く項目は、「自分の基本情報」「お金」「医療・介護」「葬儀・お墓」「相続」「デジタル」「連絡先」「メッセージ」の8カテゴリで整理すると漏れません。各項目の書き方を具体的に見ていきましょう。
| カテゴリ | 主な記載内容 | 書き方のコツ |
|---|---|---|
| 基本情報 | 氏名・生年月日・本籍・血液型・健康保険証番号 | 迷わず書けるので最初に |
| お金(資産) | 預貯金・保険・年金・不動産・有価証券・借入 | 「金融機関名と支店名」中心に。残高は概算でOK |
| 医療・介護 | 持病・常用薬・延命治療や告知の希望 | 希望は「する/しない/家族に任せる」で |
| 葬儀・お墓 | 形式・規模・宗派・お墓の有無・喪主候補 | 既に契約があれば連絡先も |
| 相続 | 遺言書の有無と保管場所・相談先の専門家 | 詳細な分け方は遺言書で(後述) |
| デジタル | スマホ・PC・SNS・サブスク・ネット銀行 | パスワードは別管理(後述) |
| 連絡先 | 親族・友人・知人・かかりつけ医・士業 | 訃報を伝えてほしい人を明記 |
| メッセージ | 家族や大切な人へ伝えたい思い | 短くてもOK。空欄でも可 |
お金(資産)の書き方 が、家族にとって最も重要です。預貯金は「どの銀行・どの支店に口座があるか」が分かれば、残高は概算でかまいません。生命保険は保険会社名と証券番号、不動産は所在地、株式や投資信託は証券会社名を書きます。住宅ローンやカードローンなどの負債も必ず記載しましょう。プラスの財産だけでなくマイナスも分かることで、家族は相続放棄を含めた正しい判断ができるとされています。
医療・介護の希望 は、延命治療を「希望する/希望しない/家族に判断を任せる」の3択で書いておくと、いざという時に家族が悩まずに済みます。余命や病名の告知についての希望も書けると親切です。
デジタル遺品 は近年とくに重要です。スマホやパソコンのロック、ネット銀行・証券、有料のサブスク(動画・音楽配信など)、SNSアカウントの扱いを書き残します。放置すると料金が引き落とされ続けたり、アカウントが乗っ取られたりするリスクがあるためです。
銀行の暗証番号やスマホのパスワードを、ノート本体にそのまま書くのは避けてください。ノートを紛失・盗難された場合に悪用される恐れがあります。「パスワードは金庫の中」「別紙に記載」のようにありかだけを示すのが安全です。
項目はすべて埋めなくてかまいません。「分かる範囲・書ける範囲」で十分に役立ちます。
ケース別の書き方|おひとりさま・夫婦・親に書いてもらう
エンディングノートは立場によって重点を置くべき項目が変わります。自分のケースに合わせて、力を入れる場所を調整しましょう。
ケース1:おひとりさま(単身)の場合
身近に状況を把握している家族がいないため、「死後の事務を誰に頼むか」が最重要です。緊急連絡先、賃貸や持ち家の扱い、ペットの引き取り先、デジタル契約の解約情報を手厚く書きます。必要に応じて、死後事務委任契約や任意後見などの制度を専門家に相談する旨も書いておくと安心とされています。
ケース2:夫婦の場合
お互いの資産・保険・年金は意外と把握していないものです。夫婦それぞれが1冊ずつ作り、お互いに「在りか」を共有しておきましょう。どちらかが先に判断できなくなった場合に、残された配偶者がスムーズに手続きできます。
ケース3:親に書いてもらいたい場合
子から親へ「書いて」と切り出すと、「早く死ねということか」と受け取られがちです。まずは自分(子)が先に書いてみせる、あるいは「最近こういうノートがあるらしいよ」と情報として渡すのが角の立たない方法です。一緒に旅行や帰省のタイミングで、思い出話のついでに少しずつ聞き取るのも一つの手です。
親に書いてもらうコツは「完成を求めない」こと。連絡先と資産のありかだけでも聞けたら大成功です。無理に進めると関係がこじれるため、相手のペースを尊重しましょう。
どのケースでも、「家族や周囲が、もしもの時に何を知りたいか」を想像して書くと、内容が実用的になります。
書いた後に後悔しないコツ|保管と更新
エンディングノートは、書いたあとの「保管」と「更新」「在りかの共有」まで行って初めて役立ちます。せっかく書いても、家族に見つけてもらえなければ意味がないためです。
保管場所 は、「家族が見つけられて、かつ他人には見られにくい場所」が理想です。完全に隠してしまうと発見されず、逆にリビングに置きっぱなしだと個人情報が漏れます。仏壇の引き出し、書斎の決まった棚、貴重品をまとめた場所などがよく選ばれます。
在りかの共有 は必須です。信頼できる家族や友人に、最低1人は「あの場所にエンディングノートがある」と伝えておきましょう。おひとりさまの場合は、士業や死後事務の依頼先に伝えておく方法もあります。
更新のタイミング は、次のように決めておくと放置を防げます。
- 年に1回、決まった日に見直す(誕生日や年末年始など)
- 大きな変化があったとき(引っ越し・退職・口座やカードの解約・家族構成の変化)
- 気持ちが変わったとき(医療や葬儀の希望は、年齢とともに変わって当然です)
古い情報のまま放置すると、解約済みの口座や使っていないサービスが残り、かえって家族を混乱させます。情報は「最新であること」が価値です。
書いて終わりにせず、「見つけやすい場所に保管 → 在りかを1人に伝える → 年1回更新」までをワンセットにしましょう。この3つが、家族が本当に助かるエンディングノートの条件です。
専門家・公的情報の見解
専門家や公的機関は、「エンディングノートは法的効力を持たない」「財産分与の指定には遺言書が必要」という点を一貫して強調しています。両者の役割を正しく理解することが、後悔を防ぐ最大のポイントとされています。
エンディングノートと遺言書の違いを整理すると、次のとおりです。
| エンディングノート | 遺言書 | |
|---|---|---|
| 法的効力 | なし | あり |
| 主な役割 | 情報共有・希望や思いの伝達 | 財産の分け方の指定 |
| 書き方の自由度 | 自由(様式の決まりなし) | 法律で様式が決まっている |
| 費用 | 無料〜数千円 | 自筆は無料/公正証書は手数料 |
遺産を「誰に・どれだけ渡すか」を法的に有効な形で指定したい場合は、エンディングノートではなく遺言書を作成する必要があるとされています。
また、多くの自治体が終活支援としてエンディングノートを無料配布しています。お住まいの市区町村のホームページや窓口で確認すると、費用をかけずに入手できる場合があります。
遺言書については、自筆で作成した遺言を法務局が預かる「自筆証書遺言書保管制度」や、公証役場で作成する「公正証書遺言」といった制度があるとされています。確実性を重視するなら、公的な制度や、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家への相談が安心です。
エンディングノートで「自分の希望や情報」を整理し、法的に残したい部分は遺言書で補う——この役割分担が、専門家の推奨する基本的な考え方です。
なお、本記事は一般的な情報をまとめたものです。相続や税務、医療の判断など個別の事情については、弁護士・税理士・医療機関などの専門家にご相談ください。
やってはいけないNGな書き方
エンディングノートには、「やると家族をかえって困らせるNG」がいくつかあります。良かれと思って書いたことが裏目に出ないよう、次の点に注意しましょう。
- 暗証番号・パスワードを本体にそのまま書く … 紛失・盗難時に悪用される恐れがあります。ありかや管理方法だけを示しましょう。
- 遺産の分け方を「法的に有効」と思って書く … エンディングノートに「長男に家を相続させる」と書いても法的効力はありません。分与の指定は遺言書で行う必要があるとされています。
- 誰にも在りかを伝えず厳重に隠す … 発見されなければ存在しないのと同じです。最低1人には伝えましょう。
- 古い情報を放置する … 解約済みの口座やサービスが残ると、家族の手続きが煩雑になります。
- ネガティブな内容や恨み言だけを書く … 受け取る家族の心に重い負担を残します。事実情報を中心に、伝えたい思いは前向きな言葉で。
- 「完璧に全部埋めてから渡す」と決め込む … 完成を待つうちに書けなくなるのが最も多い失敗です。
最も重大な誤解は「エンディングノート=遺言書」と思い込むことです。法的に財産を分けたい場合は、必ず遺言書を別途用意してください。混同すると、相続トラブルの原因になりかねません。
NGを避けるだけで、エンディングノートの価値は大きく高まります。「家族が安心して使えるか」を基準に見直してみましょう。
よくある質問
Q1. エンディングノートと遺言書は何が違いますか?
最大の違いは法的効力の有無です。遺言書は財産の分け方を法的に指定できますが、エンディングノートに法的効力はありません。エンディングノートは情報共有や思いの伝達、遺言書は財産分与の指定、と役割を分けて両方そろえるのが理想とされています。
Q2. 何歳から書き始めればよいですか?
思い立った今が始めどきです。「何歳から」という決まりはありません。判断力や体力があるうちのほうが内容も充実し、家族の負担も減るとされています。50〜60代から書き始める方が多いですが、若い世代がデジタル情報や緊急連絡先を整理する目的で書くケースも増えています。
Q3. 無料で手に入りますか?
はい、多くの自治体が無料配布しています。お住まいの市区町村のホームページや窓口で確認してみてください。インターネット上の無料テンプレートを印刷したり、市販品(数百〜1,500円程度)を購入したりする方法もあります。
Q4. 時間がありません。最低限どこを書けばよいですか?
優先順位は①資産のありか ②緊急連絡先 ③医療・延命治療の希望の3つです。この3項目だけでも、もしもの時に家族が真っ先に困る場面を大きく減らせます。まずはここから埋めて、残りは少しずつ追記すれば十分です。
Q5. パスワードや暗証番号はどう書けばよいですか?
ノート本体には書かず、「ありか」だけを記すのが安全です。たとえば「ネット銀行のID・パスワードは金庫内の別紙に記載」のように示し、実際の番号は別の場所に保管します。紛失・盗難のリスクに備えるためです。
エンディングノートの書き方の要点は、(1)書ける項目から箇条書きで、(2)資産・連絡先・医療希望を優先、(3)パスワードはありかだけ、(4)保管場所を1人に共有し年1回更新、(5)法的な分与は遺言書で——の5つです。完璧でなくてかまいません。今日、最初の1項目から始めてみましょう。
相続・税務・医療など個別の判断については、弁護士・税理士・医療機関などの専門家にご相談ください。
※本記事の最終確認日:2026年6月19日
